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毎日を明日なきものとして生きる

外遊びの楽しさを探すブログ

谷川岳山行 その3

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本日の目標地点だった茂倉岳に到着したものの、

周囲はガスに覆われ、疲れを取り去るほどの眺望は叶いませんでした。

茂倉岳山頂には僕を含め10人ほどの登山者が足を止め、

飲食や写真を撮ったりしています。


「どちらまでですか?」

こんにちはと声を掛けた山マダムから、そんな問いかけをされました。

「ここ(茂倉岳)が今日の目標地点なので、ピストンでロープウェイまで帰ります」

と、僕が答えました。

ちょっと驚かれた様子で、「ピストンですか?」と言っています。

話をすると、ここまで来る人の殆どは新潟県側へ下り、

土樽駅から土合駅まで電車を使って帰る人が使うルートらしく、

ピストンする人はあまりいないようです。

確かにこの時点で11時半、帰りの最終ロープウェイが17時で、

予定だと余裕を見て15~16時に、天神平でロープウェイに乗る計画でした。

しかし、茂倉岳から土樽駅までのコースタイムは2時間半。

土樽駅の発車時刻は15時20分。

「このペースなら余裕じゃないですか?」の言葉にも後押しされ、

地図とにらめっこをした結果、土樽駅へ向かうコースに予定変更しました。

(あくまで自己責任の範囲です)

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幸いな事に体もまだ軽く、いつもならそろそろ出始める足の痛みも

今のところ感じられません。

先週に八ヶ岳を登っているので、体調も良かったのではなんて思いながら、

土樽駅へ向かい出発しました。

 

いつも車で登山口まで行って、ピストン、周回コースなどで

駐車場まで戻ってくる登山しかしたことのない僕にとって、

イムリミットがある登山は未知でした。

このコースの存在を知っていましたが、

イムリミットがプレッシャーとなり、

計画段階で除外していました。

その不安を払拭するように、余裕を作るべくペースアップします。

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分岐点より少し下ると、避難小屋が見えてきます。

後は下るのみ、避難小屋では足を止めず、先を急ぎました。

 

コースは膝位の笹に覆われ、人一人歩ける幅があるのみです。

ここ数日雨が多かったのか?粘土質の足元はかなりスリッピーです。

目の前で先程の山マダムがしりもちをついていました。

慎重になりながらも、タイムリミットが頭を過り、

ペースを保って下るのですが、恐らくこれらの要素で変な力が入ったのでしょう、

後になって利いてくるとはこの時はまだ知るよしもありませんでした。

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少しガスもどいて、写真を撮っては気分を晴らします。

徐々に疲れもたまってきたようで、足に違和感を感じるようになってきました。

また標高が下がったのと、ガスと晴れ間が交互に現れる天気で、

気温と湿度の上昇と共に、体力も奪われていきます。

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遠くに高速道路が見えてきました。

土樽駅はあの高速道路の脇にあります。

少しホッとしましたが、本当はここからが本番です。

 

ザックから飲み物を取り出している間に、

茂倉岳山頂であった青年2人組に追い付かれました。

「がんばりましょう!」とお互いにエールを送り、

僕は少し食べ物を口にして、燃料補給して彼らの後を追うように

再び出発しました。

 

どんどん斜度がキツくなる下りに、

露出した木の根、湿った粘土質土に足を取られ、

疲労は増すばかり。

この時はさすがにルート変更したことを少し悔やみましたが、

普段甘えている自分へ挑戦の意味も込めて、

最後まで諦めること無く、がんばろうと言う気持ちも芽生えてきました。

 

目印が少ないコースで、現在地もよく解らず、

残りがどのくらいなのかも分からない状態で、

しばらく足が止まってしまいました。

そこへ後ろから現れたのが先程の山マダム達、

「もう少しですよ、がんばって!」の声を残し、

あっさり追い抜かれてしまいました。

その時自分がペースダウンしていることに気づきました。

いや、もう随分前から分かっていたのですが、

気づかないフリをしていたのだと思います。

この時初めて「電車の時刻には間に合わないかも」と言う

何とも言えない不安にかられたのを覚えています。

 

下る毎にロープが設置された傾斜のきついところが増えてきました。

足場は荒れていて、疲れも追い打ちされて踏ん張りがきかず、呆気なく転倒。

慎重になり体が固くなる悪循環は、そう簡単には拭えません。

そんな時、背後から人の気配がしました。

今まで会ったことないご夫婦のペアでした。

 自分より早いペースだったので、先を譲ります。

「こんにちは、ありがとうございます。」とすれ違いざまに声を掛け合い、

僕はしばらく一人で歩いていたので、ご夫婦にペースを作ってもらおうと思い、

少し離れた距離を保ちつつ、一緒に下り始めました。

 

気が抜けるのを防止するために、下り始めてからは時計を見たいませんでした。

時計を見ることで、諦めや気の緩みに繋がると思ったからです。

恐らく前を行くご夫婦も、このルートにいる時点で

土樽駅へ向かっている可能性は高く、

この時点ではなんとしてもこのご夫婦にペースを合わせるのが、

僕にできることでした。

 

ご夫婦との差が少しずつ開くのを感じました。

トンネル状に木々に囲まれた登山道が、

葉を叩く雨音に包まれまれ、カッパを着るかを考えていると、

ご夫婦が止まってカッパを着込んでいるようです。

残りの距離も今一把握できていなかったので、

時間のロスを覚悟で僕もカッパを着込みました。

 

少しカッパの出し入れに戸惑い、

再び出発する時にはご夫婦の姿はすでにありませんでした。

時折激しく打ち付ける雨は一瞬の内に過ぎ去っていきましたが、

空の様子はまたいつ降りだしてもおかしくないような雲行き。

カッパを着たまま進みますが、雨が止むとカッパの中は、

蒸し風呂のようで更に汗が滴り落ちます。

集中力も切れ掛けたその時、足を取られ呆気なくしりもちを着きました。

この時気持ちの糸がプツリと音を立てて、切れたような気がしました。

もう諦めよう。

その場に立ち止まり、ペットボトルに残された水を飲み干しました。

どのくらいの時間立ち尽くしたでしょうか。

再びポツリポツリとカッパを叩く雨音が、

こんな僕を慰めてくれているようにも思えました。

再び歩き出すと、土合駅までどうやって帰ろうかと考えていました。

幸いこの日は土曜日、非常食も持っているので、土樽駅で野宿も可能です。

そう考えたら気持ちが楽になり、急ぐこと無くゆっくり下って行き、

やがて少し開けた所にでました。

そこは恐らく駐車場なんだと何となく思いました。

慌てる必要もないので、ザックを下ろし、雨の心配も無さそうなので、

カッパを脱いで腰を下ろして休憩しながらザックに泥だらけの

カッパをしまっていると、どこからともなく熊鈴のような音が聞こえます。

ふと、降りてきた登山道の方を見ると、若いカップルの姿がありました。

「お疲れ様です!」

女性が声をかけてきました。

「今日はビールが美味しいですよ!」

続け様発せられたその言葉で、僕はハッとしました。

そう言えば茂倉岳の山頂で、ピストンしようか迷っている時に、

「早く帰ってビールが飲みたいので、(時間の短い)土樽駅に向かうコースにします」

なんて、冗談を言っていたのがそのカップルだと気付いた。

すでに電車の時刻に間に合わないと思っていただけに、

恐らく土樽駅みたいな向かっているであろうこのカップルの存在に

動揺している自分がそこにいました。

そのカップルに僕は

土樽駅に行くんですか?」と言うと

「そーです。」と明るく女性が言った。

「え?!まだ電車間に合うんですか?」と言うと、

「かなりギリギリみたいですけど、行けそうですよ」と、

そのカップルは姿を消して行きました。

全く諦めていただけに、心底きました。

そして、直ぐ様ザックを背負いそのカップルの後を追いました。

最後の力を振り絞り、ペースをあげて歩きました。

舗装路に出ると地面の固さが堪えます。

すると、後ろからも声が聞こえてきました。

僕の100m後方に、別のカップルの姿が見えます。

方向からして彼らの向かう先も土樽駅

その時脳裏にはなぜかZARDの『負けないで』が流れました。

そう、24時間テレビのアレです。

線路が見えた時は涙ぐみそうになりました。

程なくして駅舎が見えてきました。

この時僕の頭の中はサライ一色です。

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入り口を見ると、山マダムのお二人が出迎えてくれました。

「私達が変なこと言っちゃってごめんね」と、

どうやら山頂で誘ってしまったこを、気にしていたようです。

「最終的に決断したのは自分の責任ですし、逆にこのコースを

経験させてくれた事に感謝してますよ」と言いました。

心配お掛けしてすみませんでした。

こうやって無事電車に乗ることができ、土合駅まで着くことができました。

清水トンネルを通過するのは、高校の時にスキーへ行った時以来。

トンネルがタイムスリップをしているかのようで、

ぼんやり窓の外を眺めていました。

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もぐら駅土合に到着です。

僕の好きな『クライマーズハイ』と言う映画に出てきた駅で、

一度訪れたいと思っていた駅でした。

ここから車を停めたロープウェイ乗り場の駐車場まで、おおよそ20分。

のんびり歩いて帰ろうかと思ったのですが、

先程の山マダムが車で送ってくださるとのことで、

ありがたく同乗させていただきました。

 

今回は色んな経験ができました。

計画や計画変更などについてもそうですが、

体力面も山にみあうだけのトレーニングは準備としてやって行こうと思いました。

そして、なにより最後まで諦めない心は

これからの糧になるのではと思いました。