今か今かと入梅に突入するのを匂わせる天気予報に、
貴重な週末の晴れ間を何に使おうかと考える金曜の夜。
山も良いけど、以前より気になっていた、
あまりに近い水系の原流域、ふと思い出してすぐに準備を整え、
翌朝の明け方には、水辺に立っていた。
そんな思い付きでもすぐ行ける、そんな『ホーム』とも呼べる、
身近な川を探しているのもある。
まぁ、魚さえ居てくれれば、釣果には拘らない。
なかなか釣れないながらも、わずかな時間で渓を感じられる。
そんな川を求めての探索でもあるのだ。
この水系は定期的に放流はあり、
放流後しばらくは賑わう水系の上流部にあたる。
魚止めから上は放流はなく、人もいないだろう。
ホームにするにはまさに1人の時間を楽しめる、
条件が整っていた。
初めて入る水系は、いろんな意味でドキドキワクワクするものだ。
魚の存在はもちろん、危険、野生動物、霊的なものだったり、
事件的な事であったり。
とにかく山奥ってところは常に不安が付きまとうものである。
水辺に立てば、そんな不安もどこへやら、
お気に入りの熊鈴を高らかに響かせて、一路目指すは最上流部。
水の色はささ濁りのように白みを帯びているが、
何かの原因で濁っているわけでは無さそうで、
その水系の水色なのだろう。
水量も渕の水深も悪くなく、ここに居なければ
嘘だろって場所にも魚影はない。
やっぱり魚はいないのかと思うには、十分なシチュエーションである。
普段なら飛ばして先を急ぐほどの、小さな場所に投げ入れたルアーに、
底石の隙間からもんどりうって飛び出した小さな影。
掌ほどの小さなその魚は、僕の努力に応えてくれた。
時間帯か、そのエリアに何かがあったのかは不明だが、
結局釣り上げたのは1尾のみ。
しかし、釣り上げた魚以上に、そこで産卵があり、
幼魚が育っている環境があると言うことの方が、
何よりの成果である。
いつかまたこの川を訪れた時、
もっと逞しい魚たちに出会えることが楽しみである。