毎日を明日なきものとして生きる

外遊びの楽しさを探すブログ

改元 その3

震える手で胸ポケットから取り出した画面のくもりを拭い、

カメラモードにして横たわる手にした魚を記録に残す。

浅瀬に横たわらせた事が嫌だったのだろう、

その魚は体をくねらせ、体を立てようとする。

 

ごめんよ。ちょっとでいいから付き合っておくれ。

 

魚をなだめながら、再び態勢を横にして、

素早く写真を数枚撮る。

スマホを胸ポケットに戻し、ネット越しに手で魚体を支え、

ゆっくり川底に戻っていくのを確認して、

薄暗い渓から見上げた空は、すでに明るく、

雲の切れ間に青空を覗かせていた。

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上流へ向かい、再び攻め上がっていく。

しかし、最初にあんなクオリティーの魚と、

たまたま出会えただけで、厳しい状況は変わりなかった。

見た目ここぞと言うポイントは、ことごとく不発。

足元にも魚影は見られず、チェイスの影もない。

最初の勢いはどこへやら、意気消沈とはこのことで、

足取りも重く、今日はあの1尾で終わりにしても

良いなんて思いも頭を過る。

だけど、さっきの魚が頭の片隅から離れない。

その思いだけが推進力となり、歩みを上流に向けた。

 

過去にコンスタントに魚がストックされている場所、

ここで出なければ諦めよう、

そう思うのも自然な流れであった。

事実朝一の1尾から、チェイスの影も見られなかった。

1つ背を超えると、二つの落ち込みがあるプールがある。

少しずつ落とすポイントを変えながら、丁寧に打って行く。

怖いのは根掛かりで場を荒らしてしまう事、

しかし最深部にコンタクトしなければ結果に結びつかない、

そんな気がしたからこそ余計に慎重になる。

 

あと数投、ラスト何投は無限を意味する。

釣人あるあるに失笑しつつ、その意味を噛みしめていた。

時間的にもあと数投で切り上げなければならない。

そんな事が思い浮かんだ刹那に訪れた竿への衝撃。

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苦労の末、やっと掴んだ2尾目でこの日の釣りを終えた。

厳しい釣りではあったものの、衝撃的で記憶に残る釣行となった。


つづく