毎日を明日なきものとして生きる

外遊びの楽しさを探すブログ

逃避 その3

8月も末になり、未だに暑い事には変わりないのだが、

セミと入れ替わるように、夜になるとコオロギの声が

聞こえるようになってきた。

日中はまだまだだけど、朝晩はだいぶ過ごしやすく

なってきたように感じる。

そうやって四季の移り変わりを感じつつ、

今期の渓流も足早に禁漁へと向かって行こうとしていた。

 

今年の遠征は苦戦していた。

いや、『今年も』と言った方が、間違いないだろう。

よくよく過去の夏を思い出してみると、

同じような状態であった。

もっとさかのぼってみて、過去にも淡水の釣りは、

この時期なかなか思い通りに運べないような記憶がある。

バスで言えば、好奇心旺盛な小さな魚が、

先に反応してしまうような状態なのかもしれない。

しかし、何か僅かな差で、大きく変わることも過去にはあった。

そんな何かを待ち望みながら、釣行の日を伺っていた。

 

とは言うものの、日程に限りがあるので、

悠長な事も言っていられない。

何か足掛かりになる要素はないかと、

天気予報を眺めていると、翌日朝の内に

傘マークが付いていた。

期待をこめて、リーダーを結び直し、

翌朝渓へ向かった。

 

渓までの途中、所々雨に降られたものの、

エントリーポイントに着いた時は、

すでに雨は止んでいた。

川沿いに平行して走る砂利道にも

水溜まりができていたが、それほど大きなものではなく、

川の水も濁りなく、相変わらず川底まで見える

透明度であった。

 

前回目星を付けたポイントを軽く流しながら、

今回はさらに上流のポイントへ狙いを定めた。

最初に入ったポイントで、手前を軽く数投探り、

次に本命に入れると、すぐさまヒットする。

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今回の遠征で、苦戦していただけに、

拍子抜けするほどあっさりスタートから釣れて、

力の入った肩も、スッと力が抜ける。

今回は長い距離を上り、広範囲で魚の付場を

探そうと言う作戦。

大きい魚を探し、粘る釣りではなく、

テンポ良くやる気のある魚を探そうと思っていた。

 

小さく左右に蛇行する流れ、

流芯をかすめるように点在する沈み石の

エグレにドリフトさせながら、送り込んだり、

素早く駆け抜けさせたり、今回はイワナからの

反応が全くなく、ヤマメばかりだった事も考慮し、

こんなときヤマメはどこで反応するかを

想像しながら、ルアーやトレースコースを変えていく。

現場では目を三角にして、躍起になっているので、

なかなか気づくことはないが、

釣行を思い出しながら、文章に起こすことで、

気づくことはかなり多い。

 

朝一の一尾から、数m上ったポイント。

何となく見覚えのある大きく湾曲した川筋。

何年前になるだろうか、ここで良い魚に出会い、

小躍りして喜んだポイントだ。

大雨などの侵食で、だいぶ形は変わってしまったけど、

まさしくこのポイントだと言う確証はあった。

その場に立つことで、忘れていた、いや、

奥底に仕舞われていた記憶が

不思議とつい先日の記憶のように、

鮮明に呼び起こされることがある。

老化と共に、物忘れが進行していても、

そんな過去の記憶はどこかに大切に仕舞われているのだろう。

 

右岸に立ち、バックハンドで、対岸のヨレにルアーを落とす、

確か、立ち位置は一緒だけど、当時はバックハンドが

下手クソであったが、今はなんとか様になっている。

次はもう少し上流へ入れて、流芯をかすめて石のエグレを

流れに負けないように泳がせる。

グンっと竿が引っ張られ、流芯をまたいで逃げる魚。

おお!っと一瞬大きさを期待するほど、

元気の良いやる気な魚でした。

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その後、同じぐらいのサイズが

テンポ良く釣れたり、バレたり、ポロリしたり、

あー!とか、ぎゃー!とか、ひとしきり満喫して、

今回の遠征が終了しました。

 

終わってみれば、楽しかったと終わるこの遠征。

考えてみれば、尻上がりに魚が釣れるようになる傾向で、

それは単純に渓の波長に、僕が合わせられた

だけなのかな、なんて思います。

毎年毎年、新たな発見があり、

毎年毎年、新たな楽しさをくれる夏の遠征だけど、

1年に1度しかないと思うと、残りの人生で

この感動を味わえるのは数少ない。

季節が絡む事は、1年中やることができないだけに、

残りの人生を悔いなく過ごす為に、

何をすれば良いだろうと真剣に考えさせられる。

時に、こんな事を考える切っ掛けを与えてくれるのも、

この遠征が僕にとって人生の一部となっている

証だと思うのである。

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おわり


渓流釣りだけではない、この遠征。

他にも色んな思い出があったので、

もうしばらくこの思い出を綴ります。