毎日を明日なきものとして生きる

外遊びの楽しさを探すブログ

春の遠征

今年も待ち焦がれたこの季節がやってきた。

渓の解禁より遥かに待ち遠しく、この遠征こそ僕にとって

本当の意味での解禁と言っても過言ではない。

いや、それはちょっと言い過ぎたかも。

何にしても楽しみであるという事は確かなのだ。

 

早朝の渓までの道は、連休にも拘らず空いていて、

拍子抜けなほどに早く現場についてしまった。

本当は翌日に釣りをする予定だったが、

この日から天気は下り坂で、翌日は大荒れの予報。

急遽この日に予定をスライドさせた。

しかし、天気の下降も早まって、現場に付いてみれば風は強く、

今にも雨粒が落ちそうな空の色をしていた。

 

支度を済ませて、早々に上流を目指す。

雪代の影響か、水量は多いように見えた。

川沿いを強烈に駆け抜ける風に、被っていたジャケットの

フードごと吹き飛ばされそうになる。

ごうごうと音をたてながら、風が森の木を揺らす。

あぁ、悪い日になってしまったと肩を落としそうになるが、

こんな日は何か起こしてくれそうな気がして、

そんな淡い期待を胸に、川沿いの山道を最初のポイントまで歩いた。

 

ポイントに降り立つと、雨脚がより一層強くなり、

水面の波を打ち消すように雨粒が打ち付ける。

通年ならば山桜の花びらがよどみに溜まり、

春の釣りに彩を加えるのだが、今年はすでに散ってしまったようだ。

獣が叫ぶような音をたてる薄暗い渓谷、

雨をかき分けるように流し打ちながら遡上する。

雨風は強弱を繰り返しながらも、

小型の魚影が数回チェイスするのみで、未だアタリも得られていなかった。

 

最近は雨となると、釣りに出ることも少なくなったが、

雨が降っていたら降っていたで、

それはそれで心地よい心境にもなる不思議な感覚。

新しく仕入れたミノーの、動きと特性を確かめながら打ち込んでいく。

新しいルアーを使う、釣れるか釣れないかを楽しむ過程は

久しぶりのことである。

かなり上流に近くなったところに、大きな落ち込みがある。

ここからすぐ先に魚止めの堰堤があり、

だいたいこの落ち込みを最後に、折り返して打ち下るのが

ここ数年僕のパターンになっている。

 

手前から対岸の縁を丁寧に探っていく、

もったいぶって、レンジも細かく意識しながらその時をじっと待つ。

対岸の反転流に乗せて鋭く潜るミノーが、

白泡で見えなくなったその次の瞬間、

ゴンゴンと首を振って抵抗する魚信が竿に伝わった。

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やっとつかみ取った初魚。

噛みしめるように空を見上げると、

顔を叩く雨粒はなくなっていた。

次の出会いを焦るように、来た道を足早に下り始めた。