梅雨に入る頃、庭先の棚にぶら下がる奇妙な植物が現れる。
その正体は、藤の種である。
質感はインゲンに似ており、大きさはソラマメ。
シルエットはエダマメを大きくした感じである。
藤の棚を作って3年目ぐらいの時だろうか、
僅かばかりの花が咲き、やがて梅雨の頃になると
豆類の鞘のような膨らみが、花の先端部分にできた。
こんな風に藤が種を付けるなんて知らなかった僕は、
その奇妙な様相にちょっと気味悪さすら感じたのを覚えている。
やがて、秋になり葉が落ちて、本格的な冬が到来するころには、
鞘もすっかり茶色くなり、木の実の殻のように堅くなって、
割れた鞘の中には柿の種(アラレの方じゃなく)ほどの
種が入っていた。
梅雨明けしたように照りつける強い日差しを遮るように、
藤棚の葉がゆれ、涼しげな木陰を作ったその下に、
今年は沢山の藤の種がぶる下がっている。
考え方によっては音のない風鈴や、
雫を模造したオブジェにも見えなくはない。
そんな風に思ったら、途端に涼を感じて
しまえるのだから、単純なものである。
来年以降も梅雨明けの楽しみができ、
風物詩と言える風景が庭先にできたことが、
少し嬉しく感じられました。