毎日を明日なきものとして生きる

外遊びの楽しさを探すブログ

源流へ

あの各地で大きなもたらした、台風19号の2日後の話である。

 

かねてより計画していた登山の計画。

それは台風19号が上陸し、通過した2日後の10月11日であった。

今年は登山を計画すると、ことごとく荒天となり

これまで登れた山は、僅かに2座であった。

いつもであれば、徐々に冷えてくる朝、

秋晴れに今年の紅葉の具合が気になるのが

この季節の登山の楽しみでもあるのだが、

それより先に天気に阻まれては、紅葉もへったくれもない。

天気ばかりはどうすることもできないとわかっていても、

雨で中止になった山行を予定していた朝に、

何度二度寝を強いられたことか。

ましてや今回は台風、とてもではないけど

太刀打ちできるはずもない。

しかし、3連休であることで、土曜の晩に台風が通過すれば

日曜を挟み、祝日の月曜日には登る事ができるのではないか?

と、淡い期待を抱きながらいつでもいける準備をしていた。

 

今回予定していた山は長野、埼玉、山梨にかかる甲武信ヶ岳

昨年、一昨年と隣山である、金峰山瑞牆山へ登ったこともあり、

近いうちに登りたいと思っていたのが、甲武信ヶ岳だ。

この山には千曲川の源流がある。

その源流も見たかったこともあり、早いうちから計画していた。

しかし、台風19号といえば長野に大きな被害をもたらしたのが、

千曲川の氾濫でる。

とてもじゃないけど登山どころの話ではないと思っていたのだが、

甲武信ヶ岳の山小屋の従業員さんのブログには、

台風通過時には山小屋にいて、被害はなかったという。

大雨の時でも上流域や山の上は大丈夫で、釣りができたことがあった。

もしかしたらなんて期待して、強行することにした。

 

テレビでは台風の被害の報道ばかり、しかしそんなニュースさえ、

どこか別の世界のような気が、その時はしていた。

ネットで情報が手に入る今の時代でも、

最終的に水辺に立ってみないとわからない。

そんな釣りでの経験もこの時は後押しになった。

そして、千曲川を氾濫させた最初の1滴が、

その時どうなっていたかも、この目で見てみたかったというのも、

この山行を強行した要因だろう。

 

天気は晴天。

何もない時ならば、手放しで山行を楽しみにできたに違いない。

しかし、どうしても不安と、こんな時に登山などという

後ろめたさがどうしても拭えないでいた。

登山口までの川はまだ泥濁りで、岸の草木はなぎ倒されていて、

ところどころ氾濫したところもみられた。

砂利や泥が道に出ているところもある。

その泥が田畑に流れ込んでいるところもあった。

何度か引き返そうとも考えたが、ここまで来たらと言う気持ちが

車を進めさせる原動力となっていた。

 

駐車場に到着すると、数台の車が停車していた。

後でわかった事だが、山小屋の従業員さんの車だったと言う事だ。

駐車場に入る林道は一部崩落があったようだ。

舗装された駐車場にも砂利が流出していたが、

重機で砂利をどかしたような跡があった。

準備を済ませ登山道に入ると、水が流れた跡があり、

溝になっていた。

いつもなら歩きやすいフラットな山道だったろう。

しかし、流れ出た砂利や溝のせいで、歩きづらく時間がかかる。

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登山道沿いに流れる川が千曲川

この上流域であっても、相当水が出たのだろう。

1日空けたこの日であってもこの水量だ。

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いたるところに崖から流れ出た痕跡が残り、

崩落した個所もいくつもあった。

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こんな日に好き好んで登山をする者もいない。

聞こえるのは轟々と流れる川の音と、野鳥の鳴き声だけ。

何かとてつもない不安感に襲われる。

何かあれば即座に引き返す準備はできていた。

ほどなくすると上の方に人影が見えた。

どうやら下山してくる人のようだ。

目の前まで来ると、この上の川に架かる橋が流されて

川を渡るのは難しい、とのことだった。

話を聞くと、ブログに記事を上げていた

山小屋の従業員さんであった。

しばし立ち話をした後、5分ほど登ったところに、

『ナメ滝』という場所があると聞き、

そこで折り返すことを決めた。

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少しずつ紅葉しはじめた木々。

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ふと目をやると苔の生す森。

緊張と隣り合わせの平常。

そうやって何事もなかったように、またいつもの山に戻っていく。

自然の中で生活している事、自然の驚異のまでは無力な事。

厳しくもあり、そして優しくもある。

感謝を忘れてはいけない。

そんな風に思うのである。

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またいつか登りに来よう。

いろんな心残りを置いてきた山行でした。