荒天の河口のポロリの胸の痛みも言えぬまま、昨日の漁港へと車を走らせた。
フロントウィンドウを打ち付ける雨の勢いは、弱まる様子を見せてはくれない。
最初から雨の中の釣りに覚悟はあったものの、次第に雨が弱まるとの
天気予報を信じていただけに、少々期待外れな気持ちになるのも無理はなかった。
漁港に着くと、釣りをしている人はいなかった。
この雨ではたとえ釣り好きであっても、さすがに釣りをしている
能天気な人はいないだろう。
良い潮のタイミングまでは数時間あるが、昨日の調子だと潮のタイミングまでに
数杯は釣れるだろうなんて捕らぬ狸的な皮算用で、
やる気満々雨の防波堤をポイントを探し歩いていく。
気になっていた濁りはそれほどでもないようで、
海面に打ち付ける雨の波紋でモザイクが掛っていて見えずらいものの、
相変わらず小魚の魚影はあった。
そう焦る事も無く、時々餌木を替えたりしてみて、
のんびりその時が来るのを待つ。
沈めたり、動かしたり、キャストの方向を変えてみたり。
今でも初心者と同じようなもんだけど、初めてこの釣りをやった事の
ぼんやり思い出していた。
それは初めて釣りをした時の記憶と通ずるものもあり、
その記憶は期待感に満ちたものである。
色んな障害を越え、今帰省出来て、自然の中で釣りができていることが、
本当にありがたく感じた。
そんな中、ギューっと昨日のあの間隔が再び竿を伝い、それを手に届けた。
昨日の簡単な好条件とはかけ離れていたが、
お持ち帰りを前提とした獲物がようやく手に入った。
その後、夕方になるにつれ雨は降ったり止んだりを繰り返し、
徐々に雨も上がって行った。
釣り人の姿もそれに合わせてか、徐々に増えてきた。
しかし、昨日はあんなに釣れていて、大潮と言う好条件であるにも拘らず、
今日は反応が薄く、再び難しいと言う印象に脳内が覆われた。
もちろん自分の腕の問題でもあるという事は、重々承知。
管釣りのように食い気のない魚でも釣り上げる方法はあるのだから、
自然の状況だけのせいにするのは不躾であるのは自覚している。
この日5時間竿を振り続け、大気を裂くようなビュンビュンと鳴り響く
ようなシャクリが出来るようになったころ、やっと3杯を釣る事が出来た。
家族で食べるのに十分満足行く量の旬の味を堪能できて、
久しぶりのイカ釣りも楽しめ、本当に良い帰省ができました。