毎日を明日なきものとして生きる

外遊びの楽しさを探すブログ

暑さ忘れて陰忘れる その1

里の木々も少しずつ色づき初め、一気に秋が深まり、

やがて来る新しい年を意識し始めていく。

普段はほとんど乗ることのない電車に野暮用で乗ると、

とこからともなく防虫剤の匂いがした。

タンスの置くで出番を待っていたコートも、

衣替えでスタメンにカムバックしたのだろう。

この匂いは、春のそれより秋を感じる気がする。

そんな余韻に浸りながら、今シーズン最期の

釣りの事を思い出していた。

 

秋が近づいているのにも関わらず、

真夏を思い出させるような太陽が燦々と降り注ぐ、

そんな禁漁間近のある日、やっとまともに

渓流釣りに行くことができた。

こんなに釣りをしない年は珍しく、

もういい加減文字に羅列するのも面倒に思えるほど、

少しうんざりしている自分がいた。

久しぶりに渓流釣りに没頭できるのと、

例年禁漁間近にあまり釣りをしないので、

一発の期待感で珍しくこの日を楽しみにしていた。

 

春先によく来る川に初めて秋の時期に訪れる。

夏に購入して、試投だけで魚を掛けていなかった

リールのデビュー戦でもある。

この日を含めて二日間。

我慢した割には短すぎる限られた時間。

限られた時間だからこそ、楽しめる方法もある。

時期的にも今年最後の渓流釣行。

否が応でも、ワクワクする気持ちを抑えられずにいた。

 

バラスの農道に入り、橋の袂のいつもの場所に車を置いて、

橋の上から川を覗くと、川の真ん中辺りに数尾の小魚姿が見えた。

恐らく鮎であろうと予測して、そそくさと準備を始める。

頭の中で川の状態を予想して括り付けルアーを

ケースの中から一つ取り出す。

この期待と不安が入り混じった時間が、たまらなく好きなのだ。

 

久々の真夏日になったこの日、この時期短パンの夏スタイルでは

寒いだろうと、ウェーダーで来てしまった事を公開する事になった。

水温は先日まで降っていた雨のお陰か、程よく冷たいのだが、

上半身は半そでのTシャツが汗でびっしょりになるほどだ。

時期と朝見た鮎の陰とで、エリアを絞ったはずだったが、

それが物の見事に外したようだ。

秋晴れと言うには少し清々しさに欠ける真夏のような日差し、

山々の緑はまだまだ濃い緑のままだが、透き通るような

空の青さは、確実に秋を感じられるまでに季節は進行している。

長雨だったり、酷暑だったりと、季節感のかけらもなく、

コロナ禍がそれに拍車をかけて、季節感を喪失させた。

 そんな中で感じられる季節の進行は、とてつもなく嬉しい物だった。

それだけでもこの釣行の意味は十分にあった。

 

お昼過ぎから始めたが、気づけば日はかなり山の方に傾いていた。

開始から幼魚が針掛かりして、ポロリが二度ほどあったものの、

どうもぱっとしないこの日。

自然を相手にしたドラマは、フィクションのように

ドラマティックにはいかない。

当たり前のようだけど、これが真実であり、

自分の実力であることは否定できない。

釣行前の期待はどこへやら、今にも脱渓しそうな自分がいる。

しかし、次のベントのその先に、次の落ち込みに、

夢の詰まった魚がいるかと思うと、撤退も躊躇してしまうのは、

釣人であればわかってもらえるだろう。

 

この日の大本命と予想していた深場にも魚の陰は無く、

次の脱渓ポイントで諦めようと思った次の何でもないベントカーブ、

一応探っておこうと思った何でもない大きな岩に流れが当たる、

何でもないような流れの中。

スッとドリフトさせたら、ようやくこの日の1尾目をキャッチできた。

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何時間かかったのだろう。

苦労が報われたとまでは言い難いが、嬉しい事には変わりない

1尾との出会いで、暑さの事も忘れさせた。

 

その後、2尾ほど同じサイズを、同じエリアで追加して、

この日の釣行を終える事が出来た。

我慢を重ねた今年の釣りで、優しく迎え入れてくれるような状況ではなかったけど、

それでも良かったと思えた事は、今年の特別な事情からかもしれない。

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