毎日を明日なきものとして生きる

外遊びの楽しさを探すブログ

ただの釣り好きが山頂を目指す その2

この記事は過去の投稿です。

 

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秋の気配を明確に感じるようになった

9月最初の週末。

僕は富士山へ向かう車の中、

秋の気配を車窓から流れる山並みが

すでにその気配があることを

感じつつ、先を急ぎアクセルを踏んだ。

昨日までの天気予報では

この日の天気は悪く、富士登山

諦めていた。

しかし、出発当日の天気予報は

奇跡的に晴れになり、こうして車を

走らせている。

目的地に向かう途中は所々で夕立に合い、

本当に大丈夫かと不安になりながらも

雨足が弱まる度に再び期待感が込み上げ、

自分の中にある登山への不安と同じように

交錯する空模様に自分を重ねていた。


今回、登山口はアクセスとマイカー規制を

考慮して富士吉田口を選んだ。

富士吉田近郊で遅めの夕食を済ますと

夜の峠道を5号目へ車を走らせる。

遠くに見える夜景を楽しみながら、

やがて車は富士吉田口の5号目駐車場に

到着した。


自分が想像をしていたより多くの車が

すでに駐車され、その中には

今まさに出発しようと言う人たちの姿もあった。

とりあえず車を停めると、外の空気に

触れようと車のドアを開け外に出た。

路面はほとんど乾いていたが、

所々うっすら濡れたところもあり、

ここでも雨が降っていたようだ。

そして夜空を仰げば満点の星空に、

時折流れ星が一筋の光を放つ。

雨で大気が洗われたお蔭、

雨にも感謝しなければならない。


高地の順応のために駐車場で仮眠を取り、

早朝に出発する予定でシートを倒し、

逸る気持ちを押さえながら目を閉じた。

今いる5号目で標高はすでに2000mを

越えている。

高山病のリスクを低くするための

高地順応である。


不意に車のエンジン音で目が覚めた。

外を覗くと登山者が次々と出発するのが見えた。

時計の針を見れば数時間しか経っておらず、

目を閉じて再び興奮をなだめる作業で

熟睡ができる状態ではなくなる。

それでも目を閉じていれば少しは

休まるかと細やかに抵抗する。

まさに自らとの心理戦である。


寝る前に見た大きく丸い月は

西に傾き、すっかりその姿を

消していた。

駐車場に少々の灯りはあるものの、

その周辺に街灯りがないと言うのは

これほどまでに暗いのかと

思わせた。

横になったままの姿勢で携帯の

天気予報を確認する。

驚いたことに微妙だった予報は

見事に一変し、晴れマークが並んでいた。

しかし、午後には一気に下り坂となる。

これを見て天候が変わる前に

出発することにした。

身支度をするために車外に出ると

気温に驚く。

さむ~

すでに晩秋のような気配に

一抹の寂しさを感じながら

ザックを背負い、いよいよ挑戦が始まる。


登山道に入るとヘッドライト無しでは

歩けない暗さに怖さすら感じた。

下を見れば遠くに夜景が見え、

上を見ると山の斜面にポツポツと

灯りが見えた。

それは山小屋の灯りだと言うことを

登って行くことで解った。


「最初の一時間が勝負だよ」

富士山に行くと話すと知人がそう教えてくれた。

初心者に有りがちなのはオーバーペースで

体力が続かない事がよくあるようで、

最初はゆっくり過ぎると思うぐらいが

丁度よいとアドバイスをいただいていた。

これは普段渓流の際にも思う事だが、

帰りの事を考えて上流を目指さなければ

ならないと言うことと同じ。

ある登山家はなんのために山に登るかの

質問に「下るため」と答えたそうだ。

例えるなら家に帰るまでが遠足です、と

同じだろうか。

そんなことを考えながら歩を進めると

少し開けた場所に出た。

立ち止まり、ヘッドライトを消すと

プラネタリウム顔負けの星が見える。

星降ると言う形容がピタリとくる。

いつも見慣れたオリオン座が見つけられない。

なぜかと言えば普段は肉眼で見ることの

出来ない星も見えてしまうからである。

五号目で見たものでも凄いと感じたが、

それより更に凄い星空に圧巻する。

北海道で見た星空と同じく、

迫りくるような星に感動した。


六号目に到達するとザックから

飲み物を入れ替え、休みなく出発した。

スローペースが功を奏したのか、

順調に登っていく。

イメージ 1




七号目に到達する頃、東の空が白みだす。

朝マズメ、そんなことを思いつつ、

少し休憩した。

この辺りで標高は3000mぐらいか?

歩いている時は気にならなかったが、

止まると途端に寒さを感じる。

風も強くなり、体感温度

更に低くなる。

この時点で手袋をした気がする。

イメージ 2




ここで御来光を拝もうと思ったが、

寒さもあり、先に向かうことにした。


場所は七号五尺ほどに差し掛かったころ。

雲海の中より太陽が顔を出す。

イメージ 3




ゆっくりと上がり行く太陽を見て、

自然と手を合わせる自分があった。


休憩がてらに日の出を眺め、

再び山頂をめざした。

イメージ 4




八号目を通過する頃には

太陽が山の斜面を照らし、

これから向かう山頂を初めて伺えた。

会社の人が貸してくれたてるてる坊主。

もちろん貸してくれたのは女性で

「これホンマご利益あるから持っていきぃ」

と、コテコテの関西のおば・・・

もとい、素敵なマダムから借りたものなのだ。

こんなにピンポイントで晴れるなんて、

本当にご利益はあったようだ。

帰って来てから解った事だが、

このてるてる坊主は東日本大震災

復興を願い、観光協会が売り出したもので、

売り上げの一部は義援金になっているようです。



八号目を越えた辺りから急に斜面が

キツクなり、それまでも点在していたが

ガレ場が続き、いよいよイメージする

富士山らしくなってきた。

それと同時に蓄積された疲れもあるだろうが、

徐々に苦しくなってくる。


八号五尺と九号目にそれぞれ鳥居があり、

小鳥居と大鳥居と言うらしい。

その先には山頂の久須志神社もなんとなく

視線の先に入ってきた。

見えている目標は簡単だと思っていたが、

その僅か先にある目標がとてつもなく遠い。

続く