最終日、翌日は帰路に付き、
その数時間後には現実の世界の住人に戻る。
何をしようか迷った挙句、先日の川へ身をゆだねることにした。少し遅めの朝、薄曇りの空が明るくなっていく。
前日の夕方に降った雨の影響か、水位は若干上がっているように感じた。
そして、前日まで幼魚が群れを成していた渕には、魚の影はなかった。
気にはなったが、前日より1つのポイントに時間を掛けて釣り上がる。
前日の記憶が新しい中、このベントカーブを曲がれば、
良いポイントがあったはずと、慎重に川を渡って、対岸からアプローチをする。
石の影に隠れるように、そっと渕をのぞき込むと、
岸際の石の上に見慣れた物陰。
あ!
思わず声がでるのも無理はない。
前日散々探し回った、ランディングネットの姿がそこにあった。
諦めていただけに、再開の感動もひとしおである。
相棒との再会で、意気揚々と川を上るも、
前日魚の出た流れからは反応が無く、
一度山道まで出て、大きく上流を目指した。
いかにもと言うポイントからの反応はことごとなく、
ちょっとした渕で手のひらにすっぽり収まるほどの、
可愛らしい幼魚がミノーに食ってきた。
携帯のカメラを起動させようと、ポケットから出すと、
電源ボタンを押してもうんともすんとも言わない。
充電をし忘れたのかと、その場は諦めたが、
後に致命的な故障と判明し、携帯を変えることになろうとは、
この時は知る由もなかった。
遡上を続けると視界に、魚止めの堰堤が入ってきた。
あと少しでこの日の釣は終了、それと同時にこの遠征、
この夏の終わりを意味する。
もう少しこの時間を楽しみたい。
そんな思いから、粘るようにルアーを変える。
無常にも後小さな筋2つ程度。
落ち込みの下から慎重にラスト2筋目を流すと、
待望の魚が体をくねらせ、もんどりうって水面を割る。
慌てて、戻ってきた相棒(ランディングネット)に滑り込ませると、
その魚はヤマメだった。
ここまでヤマメが上がってくるとは思っていなかった。
この川のこの区間で、ヤマメを釣ったのは初めてのことだった。
それ故に新たな発見に心が躍った。
こうやって今回の遠征も幕を下ろした。
毎回同じような感想になるが、飽きることなく、
毎回新しい発見がある。
だからこそ毎年が楽しみになるのだ。