台風19号が僕の地域を通過したのが、
日付の変わる頃だった。
いつもであればこんな時間であっても、
家の前の道路に多少車が走る音が家の中まで
聞こえてくるのだが、その日は静かなものだった。
つい数時間前まで携帯のアラートが鳴っていただけに、
外出している人もいないだろう。
もしかしたら、避難所に行っている人もいるのかもしれない。
雨も止み、静まり返った家の外をそっと覗いてみる。
外灯の灯りにしてはやけに明るい。
恐る恐る外に出ると、月が出ていた。
車も通らない、家の灯りも無く、
生ぬるい風が、通り沿いに吹き抜ける。
そして、月明かりに照らされ、なんとも薄気味悪い風景だった。
あんなに各地で甚大な災害をもたらした台風が、
過ぎた後はどこか悲しい風景でした。
次の日の朝、信じられない被害をニュースが報じていた。
昨夜の風景を思い出し、自然の無常さを思い知ることになった。