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外遊びの楽しさを探すブログ

ただの釣り好きが山頂を目指す その3

この記事は過去の投稿です

 

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ここまで来ると周りの登山者もさすがに

キツそうである。

皆、苦しいのは一緒だと少し安心した。

大鳥居を通過すると久須志神社の鳥居も

ハッキリと見えるようになってきた。

呼吸は少し乱れただけでもすぐに

息切れを起こす。

前にいる登山者も、その前にいる登山者も

ペースが落ちるのはもちろん、

足が止まる回数が少しずつ増え、

それに便乗するように僕も足が止まる。

目標はすぐそこなのにこの時は

果てしなく遠く感じた。


足を止めなければいずれ頂上に辿り着く。

ある登山家の言葉なのだが、

この時はこの言葉の意味を

深い部分で知ることになった。

一歩、いやこの時は半歩ずつ

次の一歩を踏み出す。

この歩みを止めなければ、

やがて山の頂きにたどり着ける。

この言葉の意味を噛み締めるように


目前の頂上に向かった。


いよいよ久須志神社の鳥居を潜る。

陽気な外国人が国境を掲げ、

記念撮影をしている。

その脇を通り、ついに久須志神社へ辿り着いた。

イメージ 1




眼下には雲海の切れ間に湖も顔を覗かせた。

イメージ 2




しばらく景色を眺め、周囲の登山者の

記念撮影にお付き合いして

シャッターを押しては、同じ登頂者と

喜びを共有する。


久須志神社の中に入り、赤いお守りを

お土産に一つ購入した。

そのお守りを入れてもらった紙袋に

「登頂証明」と入った記念のスタンプを

捺すと、幼い頃に旅先でパンフレットに

捺したスタンプのことを思いだし、

その時感じであっただろう同じ気持ちが蘇る。

神社の前のベンチに腰掛け、

ザックの中から朝食を取り出す。

イメージ 3




おにぎりは荷物に押され、

潰れていた。

その潰れたおにぎりを口一杯に頬張ると

今更になって登頂の感動が

胸に込み上げ、少し涙ぐみそうになったのを

首に掛けたタオルで顔を擦るように隠した。

再びザックを背負うと火口を覗きに歩く。

イメージ 4




正真正銘日本一高い場所、剣ヶ峰。

3773mの頂きには行かず、

周辺をブラブラと歩き、

写真を数枚撮った。

いつになるかわからないけど、

3773mの頂きに立つのは、

その時の楽しみに取っておくことにした。

正直、この時点で満足してしまった

自分がそこにはいた。

そんな自分にはそこまでは辿り着けないと

感じたからそう思ったのかもしれない。

そして下山道を下り始めた。

イメージ 5




下山道の八号目付近から山頂を見上げると、

あんなに苦労して登った山頂があんなに

小さくなっていた。

一抹の寂しさを覚えながらひたすら

登ってきた道を横目に下ると、

膝に痛みを感じるようになってきた。

まだまだ鍛え方が足りないと言うことだろう。





下を見れば 遥か下界にあった雲海が

目の高さまで近づいていた。

やがて雲海のなかを抜け、

登山道との合流地点に差し掛かると、

多くの登山者とすれ違う。

疲労した僕とは対照的に

これから頂上を目指す意気揚々とした

顔を見ると、また登りたいなんて

思うのが不思議だった。


こうやって僕の挑戦は無事に終わった。

下は小学生でさえ登れる山であるが、

初心者の安易な発想を覆すには十分な

過酷さがそこには待っていた。

やはり自然相手の遊び、その懐は深く、

やり遂げたと言う結果は

自分のなかで大きなものとなった。

単独の登山ではあったが、

周りのいろんな人の協力と

応援があったからこそでもあると

今も感謝の気持ちで一杯だ。

この場を借りてお礼申し上げます。

ありがとうございました。


五号目に戻るとお土産を買うべく

ブラっと店へ入る。

ちょっとしたお土産を購入し、

外に出ると富士山頂には雲が掛かっていた。

駐車場への階段を下りようとしたとき、

雲が晴れ山の輪郭が姿をあらわした。

イメージ 6




ほんの一瞬の出来事。

山が快く送り出してくれたかのようでした。

帰りの道中がほとんど雨のなかだったことを

考えても、いろんなことに感謝しなければ

ならないと、今になっても思うのでした。