今年はコロナ禍で、GWもお盆も故郷に帰ることができない人たちも多かったと思う。
僕は生まれも育ちも地元であって、帰省する故郷はない。
だけど、結婚して親類が増え、本当の故郷ではないにしろ、
第二の故郷と呼べる場所ができた。
毎年その帰省を楽しみにしていたのだけど、
今年のこの状況下で我慢をせざる追えなかった。
お盆に帰省を諦めた時、お盆休みを取っておいて9月の連休に充てて、
密かに帰省を企てていた。
そしてようやく今年最初で、恐らく最後になるであろう、念願の帰省が叶ったのだ。
海から遠い僕の地元と違い、少し歩けば海が見える環境にあるここ第二の故郷。
何かとふさぎ込みたくなることが多かったが、
ほっとした気持ちにさせるこの地は、
なにかにつけ僕を穏やかな気持ちにさせてくれる。
天気には雨が降ったり止んだりを繰り返し、
秋晴れの中の行楽とはならないまでも、
潮回りは最高で、それだけでもテンションは上がり、
荷物の整理もそこそこに、そそくさと釣りの準備をして、
カップラーメンでお腹を満たし、一目散に近くの漁港を目指した。
その姿はまるで小学生、そんな童心にさせるのも故郷の
包容力だろうなんて勝手な解釈をしていた。
港に着くとサヨリの群れが回遊し、足元には小魚が群れ、
中には小型のクロダイやイシダイが姿を見せる。
小魚が終われて時折水面をざわつかせ、ウミネコやトンビを触発させる場面も見えた。
あまり潮の良い時に来たことが無く、
こんなに海が賑やかな事はそう幾度も経験が無かった。
期待に胸を膨らませて、防波堤を歩きながら魚を探する。
足元に何度か30cmくらいの魚群が往来するのが見えた。
アジだったら最高だ、すかさず僕は魚群の進行方向へキャストをする。
アジング用のこの竿を買って以来、未だアジを釣った試しがなく、
またとない絶好のチャンスに、今まさに遭遇していた。
何度か見切られたり、小さいジグヘッドにも関わらず、
アタリはあるもののいっこうに針掛かりしない。
色々試しながら動かしていると、ようやくヒットした。
水面から覗かせるその魚体のわりに、かなり勢いよくドラグが出される。
以前、このタックルでイナダが掛ったのを思い出した。
アジって引くんだなぁ。
そんな事を思いながら、水面に上がってきた魚の姿を見て驚いた。
カンパチの幼魚
さっきから小魚を追い回していた犯人はコイツだった。
薄い雲の隙間から日も差してきて、気持ちの良い風が吹く。
初魚も釣れ、その後はフグやらネンブツダイやら、
目的のアジにはたどり着けなかったけど、
故郷で好きな時間を過ごすには、十分すぎる緩やかな時間でした。