前回からの引き続き、帰省のお話です。
カンパチ(幼魚)を釣り上げた頃、ポツポツと釣り人も増えてきた。
丁度潮の動く時間帯、夕マズメに向け防波堤に並んだ釣り人たちの目当ては、
この時期ならではのアオリイカである。
ここがアオリイカのポイントである事は、以前から知っており、
アオリイカが出来るタックルは事前に準備していた。
防波堤を歩いていると、向こうの釣り人が何か釣り上げたようだ。
その後の様子から釣れたのはアオリイカで間違いない。
すると、防波堤にならんだ他の釣り人の竿も、次第にしなり始めた。
まさに時合を目の当たりにしている。
本当は今日は様子見で、翌日の大潮最終日に向け、
何の釣りをしようか考えるはずだった。
一端車まで戻り、イカのタックルを準備し、再び防波堤へと戻った。
久しぶりのイカだし、本当の本当で下見だし、
どのくらいの物か試すだけだし、明日が本番だしと、
何の良いわけか分からないが、なんとなく後ろめたい気持ちで、
本気の人たちの邪魔にならないよう、ちょっと離れたところで始めさせていただいた。
イカなんてここ数年ご無沙汰だ。
エギングと言えば流行にのって、年々釣り人も増え、
漁港などは一晩中しゃくり続ける人であふれていた事もあり、
1回行って酒の肴も確保できないほど、素人の僕には過酷な状況であった。
そんな事が脳裏をかすめ、どうせ釣れないんでしょ?
なんてことを断定しにかかってくる。
でも、今の状況はどうだ。
夕方には差し掛かっているが、まだお日様も高いのに上手い人の中には
連発させている人も垣間見えた。
そんな期待感を胸に、錆びた記憶の引き出しを
埃を払いながら開けていく。
50m以上離れたお隣さんは、ここからでも聞こえそうな勢いで、
ビュンビュンと竿をしゃくっていた。
それは、大気を切り裂くと言う形容詞がぴったりだ。
少しづつ潮の流れが速くなってきたように見える。
ちょっと横にずれ、色々と探りながら試していく。
カウントして、引っ張り上げるように餌木を浮上させ、
そこからカウントで沈める。
テンションをフリーにしていたせいもあり、
しゃくりの態勢に入った時に違和感を感じた。
あ!これだ。
その後は重みが乗り、時折ギュッギュと竿先が持ってかれる。
あぁ、これこれ。
数年ぶりに出会ったそのイカは、変わらず僕の記憶のままだった。
今日は持ち帰る準備もしていなかったので、
そのまま写真だけ撮って、お帰りになってもらいました。
あくまで今日は下見、偵察だ。うんうん偵察。
翌日を楽しみに、高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、家路に着きました。